熊本市街地の賑わいから、車で20分ほど-。路面電車の走る車道沿い、三差路が交差する一角にありますのが当店です。創業の1957年当時から、変わらぬ場所で、変わらぬ製法とこだわりを持って、お客様をお迎えしております。古びた店内の壁面や柱には、私たちが長年、辛子蓮根作りに打ち込んできた「想い」がしっかりと染み込んでいるはずです。
昔も今も、私どもの商品は、熟練の職人たちが店奥の厨房にて、ひとつひとつ、時間をかけて仕上げておりますため、一度にたくさんの商品を店頭に並べることはできません。一方で、その風味は、そう長くは持たないものです。一番良い状態の商品をお客様にお届けしたいと考えますと……商品を長く店頭に出しておくわけにも参りませんので、私たちの、この不器用なペースは、ちょうど良いのかもしれません。
とくに、「揚げたて」が最高に美味しい。私どもでは、お客様の製造体験も随時、受け入れさせていただいております。揚げたての感動をお客様と共感できますことは、私どもにとりましても、最高に幸せなひとときです。
一連の製造工程の中で、蓮根に辛子味噌を詰める作業は、完成品の仕上がりを決める大切な瞬間です。
カラシみそは、空気に触れますと、風味がどんどん失われます。私どもでは、少しでも短時間で、風味を損なわないうちに済ませることを考え、この作業に関しては、機械の効率性を選択します。商品によっては手で詰め込むこともありますが、どの製法がよりお客様にご満足いただける仕上がりになるかを模索してきた結果、今の製法に辿り着きました。
熊本は、レンコンの生産量は全国上位にございます。
当店では、熊本産の品種・フヨウ種を使用。辛子味噌は当店に代々伝わる、特製の麦みそです。衣は小麦粉、そら豆の粉、ウコンの粉と冷水を混ぜたもので、揚げ油は、なたね油と、原料は天然素材を厳選しております。
そもそも、江戸時代に滋養強壮食として考案された健康食品が発祥です。(からし蓮根今昔)
健康食品と言うからには、私どもでは、安心・安全な素材で、“郷土の味”を守り続けていかなくてはならないと考えております。
熊本県内には、老舗とされる専門店も少なくありません。ただし、味や形、製法や歴史には、それぞれ異なる個性があります。欲しい商品は、ご自宅にいながら、インターネットで簡単に注文ができる時代です。しかし、私どもの店には、しばしば、遠方や県外からのお客様が、わざわざ店頭まで足を運んでくださいます。大変に有り難いことです。
これも、お客様のご期待、ご興味に寄り添えていることと信じ、お客様との出逢いを励みに、今後も変わらぬ味に、こだわり続けて参ります。
一度に数口お召し上がりなれば、「もう十分」という方もいらっしゃるかもしれません。私どもでは、この熊本の伝統食が、「どうすれば、もっと親しんでいただけるか」を考え、さまざまなシーンを提案しております。
もっともポピュラーなのは、お酒の席のおつまみかもしれません。
とくにビールとの相性は絶妙。ビールとご一緒のときは、まずはカラシレンコンを一口、それから、ビールをお召し上がりになってみてください。辛味・うま味がビールの苦味を抑えてくれますので、ビールの喉越しをより爽快にしてくれることでしょう。
ビールだけでなく、焼酎や日本酒の「引き立て方」も、よく知っております。
辛味が苦手な方は、マヨネーズをつけてお召し上がりいただくことをおすすめします。独特の辛味がマヨネーズに包まれ、まろやかなうま味が際立ちます。マヨネーズと醤油を合わせたものも、層のコクを加えてくれるでしょう。
お茶にもよく合います。
気の置けない仲間内での団らんや、突然ご来客の際の、ちょっとした「お茶請け」として。お茶請けとして出されるときは、できれば、おもてなしの一手間を。食べやすいように5~10mm程度に輪切りにしたものを、1切れずつ、サランラップにぴたっと包んで(水分を飛ばすためです)電子レンジで軽く加熱してみてください。揚げたてのような、ホクホクした食感が蘇ります。
カラシみそは、洋風に例えるならマスタードに近いので、実はパンとも馴染みます。マヨネーズやバターを塗った食パンに、輪切りにしたカラシレンコンを挟めば、ボリューム感たっぷりの昼食に。
そもそも、レンコン自体はお野菜です。サラダの具材のひとつとして、他のお野菜と合わせることもできます。かけるドレッシングによっては、多彩な表情を見せてくれるでしょう。
独特の食感と辛味をアクセントにした、アレンジレシピも豊富です。
たとえば、細かく刻んだカラシレンコンをチャーハンに混ぜ合わせる。シャキシャキとした歯応えが食欲をそそり、育ち盛りのお子様も大満足の一品になります。
熊本では、おせち料理や冠婚葬祭でのお食事、また、お中元の贈答用としても、なくてはならない存在です。私どもは、辛子蓮根を通じて、皆様の暮らしの“笑顔が集まるひととき”に、お供ができればと考えております。